Me, Live drawing
My very first customer
東京で初めての展示を行ってから数か月後、私は東京で初めてのライブイラストイベントを経験しました。ただし、自宅で定期的に絵を描き始めてからは、すでに何年も経っていました。
当時の私は、日本でイラストレーターとして自分の立ち位置を模索している最中で、こんなに早く人前でライブポートレートを描くことになるとは想像もしていませんでした。
TOKISのオーナーであるトキさんから、来場者の方々をその場で描くライブイラストイベントへの参加をお声がけいただいたとき、最初に感じたのは正直な「不安」でした。
長年ひとりで絵を描いてきましたが、人に見られながら、しかも限られた時間の中で本当に描けるのだろうか。仕上がりに満足してもらえなかったらどうしよう。誰も来なかったらどうしよう。そんな不安が次々と頭に浮かびました。
人前で、しかもスピードを求められる状況で人物を描くことに、自信があったわけではありません。それでも同時に、「挑戦してみたい」という強い気持ちがありました。できる限り準備と練習を重ね、この機会を受ける決断をしました。
イベント当日、予想していなかったことが起こりました。すべての方のポートレートを無事に描き切ることができただけでなく、多くの温かい言葉や励ましをいただいたのです。来場者数も想像以上で、2日間とも予約は満席となり、イベント後には追加のご依頼を自宅で制作するほどでした。
この経験は、私にとって大きな転機となりました。東京でライブイラストレーターとして活動することは、自分には不可能ではなく、心から「楽しい」と感じられる仕事なのだと実感した瞬間でした。
日本でイラストレーターになることを通して、この経験から学んだこと
日本で、特に外国人としてイラストレーターになるにはどうすればいいのか、とよく質問を受けます。歩む道は人それぞれですが、私にとって初めてのライブイラストイベントは、多くの大切な学びを与えてくれました。
1. 「準備ができてから」始める必要はない
東京で初めてライブイラストのお仕事を引き受けたとき、正直なところ、自分が「準備万端」だとは感じていませんでした。新しい国で活動する中で、不安や迷いを感じるのはとても自然なことです。大切なのは、真剣に準備する姿勢と、チャンスが訪れたときに一歩踏み出す勇気です。継続的な練習を重ねることで、技術と自信は自然と身についていきます。
2. 小さな機会が大きな転機になることもある
このイベントは、大きなブランドやエージェンシーからの依頼ではなく、これまでの仕事を通じて私の姿勢や仕事ぶりを知ってくれていた方からのご縁でした。規模は小さな会場でしたが、その分、自由度の高い経験となりました。日本では、信頼関係や人とのつながり、口コミを通じて仕事が広がることが多く、展示会やポップアップ、コラボレーションが最初の一歩になることも少なくありません。
3. ライブイラストに必要なのは「完璧さ」より「準備」
東京でのライブイラストイベントでは、完璧な仕上がりよりも、スピード感、分かりやすさ、そして安定したクオリティが求められます。時間を意識したスケッチ練習や、自分自身の描くリズムを理解することがとても重要です。十分な準備があることで、当日も落ち着いてお客様と向き合うことができます。
4. 日本では誠実さとものづくりへの姿勢が大切にされる
最も印象的だったのは、来場者の皆さんの温かさでした。日本では、完成した作品だけでなく、そこに込められた想いや制作過程、作家としての姿勢も大切にされると感じています。私はイラストのパッケージや、作品が長く楽しめることにも配慮してきました。また、経験を重ねる中で、作品の耐久性を考え、使用する画材や道具も少しずつ見直してきました。
5. 日本でイラストレーターとして活動するには「見えること」も重要
オンラインでの発信や制作過程の共有、自分が何をしているイラストレーターなのかを言葉で伝えることはとても大切です。展示会やSNS、そしてこのようなブログを通して作品を知り、依頼につながるケースも多くあります。
photo by Yamaguchi Shun
この最初のイベントが私に与えた変化
東京でイラストレーターとして活動することは、一朝一夕で実現するものではありません。このイベント以前、私はまだ自分の立ち位置に迷いがあり、自分の作品を人前に出すことにどこかためらいを感じていました。
初めてのライブイラストの経験は、イラストレーターとしての自分の見方を大きく変えてくれました。自信は行動する前にあるものではなく、不安や迷いを受け入れ、真剣に準備し、実際にその場に立つことで生まれるものだと気づかされたのです。
このイベントをきっかけに、日本でライブイラストの仕事を続けていこう、そして新しい機会にも積極的に挑戦しようと思えるようになりました。現在は、東京を拠点に、日本各地でファッションイラストやライブポートレートイラストレーターとして活動しています。
東京でのイベントにライブイラストをお探しの方、または日本での活動に興味のあるイラストレーターの方にとって、この経験が少しでもヒントや励ましになれば嬉しいです。